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1. 英国の PFI に何を学ぶか
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 PFI はよく知られているように、英国で発達してきた公共施設整備と運営のための考え方です。 われわれは PFI の育ってきた歴史的背景と英国の事情について考察し、その中から、日本として何を学ぶべきかを整理してみたいと考えます。 当然ながら日本と英国は、国のあり方から法律の体系まで相当な違いがあり、直訳的な PFI の導入は、消化不良を起こしかねません。

1)民営化の困難な公共事業
  1980年代の英国は、サッチャー首相の強力な指導力の下で、国営事業がかなり強引に民営化されていきました。 第二次世界大戦後、戦勝国の英国は長期の経済停滞に悩んでいました。 敗戦国の日本や旧西独の経済成長とはまさに対照的でした。 サッチャー首相はこの停滞の主な原因は非効率な国営企業にあると考え、株式の公開という形で次々に民営化を果たしていき、 サッチャー政権の終了時には、民営化しうる事業はあらかた民営化してしまっていました。 次のメイジャー政権においては、残された国営企業についても、民営化は困難としても何とか民間の能力を活用して、 効率を向上させたいという動きがでました。この流れが結実したのが PFI です。
  つまり PFI はそのままでは民営化が困難な国営事業に、工夫を加えることによって、民間の参加・参入を促し、 結果として国民・住民へのサービスの向上を図るという考え方だ、とまとめることができます。 この定義の中でもっとも重要なことは「民営化の困難な公共事業」というコンセプトです。 我々は英国 PFI の対象事業に刑務所や警察の宿舎が含まれていることを知ったとき、皆、驚いたものですが、 民営化が困難ということでは、不思議ではないわけです。 PFI の対象事業を考える際に、このコンセプトは日本でも有効です。 もし民営化が容易であれば、PFI ではなく民間に任せればよいわけです。 このように民営化しうる事業を PFI で実施すると、PFI の民業圧迫ということになりかねません。 公共性の高い事業で、それ自身では収益性も薄い事業が PFI としては向いているということになります。 この一見して、逆説的な定義が、まず英国に学ぶべき第1点です。


2)工夫を加える
  次に「工夫を加える」ということについて、英国の風土に関連して考えてみます。 英国では社会はひとつひとつの改善・工夫の積み重ねにより、徐々に良い方向に向かうという考え方が支配的です。 フランスのように革命的な変革は好みません。PFI にもこの性格が反映されています。 ガイドラインはあっても案件ごとに現実に即して細やかな工夫がされています。 案件ごとの現実に妥協しているといってもよいでしょう。 この妥協と工夫とが PFI のもう一つの特徴で、英国に学ぶべき第2の点です。
  日本は制度面では明治時代からフランス・ドイツといった大陸国家をモデルとしてきたためか、ガッチリと固定したシステムを好む癖があります。 PFI にもこの反映で、ガイドラインに従って万事型どおりに進めたがる担当者が多くいます。 PFI はすでに完成したものではなく、発展途上のものですから、さまざまな角度から柔軟な検討を加え、 新しい試みにも挑戦する柔軟性を持ちたいものです。

3)ファイナンス主導
  英国に学ぶべき第3点は、「ファイナンス主導」という点です。 もちろん PFI(Private Finance Initiative)の FI は、ファイナンス主導ということですが、ではなぜファイナンス主導なのでしょうか。 この場合のファイナンスとは、民間金融市場におけるプロジェクトファイナンス、もしくはストラクチャードファイナンスのことを意味します。
  プロジェクトファイナンスは、個別の企業の体力や信用に依拠するのではなく、事業の契約や仕組みの信用力に依拠して検討されます。 この検討(審査)のメカニズムが事業の成否を判断するわけで、PFI はこのメカニズムを活用して事業の生き残る能力(Viability)を判断してもらおうとするものです。 つまり民間のファイナンスがゴーサインを出すのであれば、この事業は20〜30年の長期にわたり生き続けるというお墨み付きを得たことになります。 つまり民間企業の市場原理により、公共事業も判断してもらおうとする考え方です。
  このファイナンス主導という考え方は、国際的なマネーセンターであるロンドンでは、極めてなじみやすいものだったと考えられます。 ロンドンの「シティ」には、プロジェクトファイナンスの専門家や弁護士が多く集まっているからで、いわば PFI のインフラが整っている場所だからです。
  このあたりの事情は、日本とはかなり違いますので、ストレートに参考にすることはできませんが、わが国においても参考にできるのは、 金融機関の役割でしょう。PFI において事業者側のファイナンスの決定者は、ぜひとも民間金融機関であるべきだと考えられます。 つまり民間の視点から PFI 事業を検討(審査)することに市場原理との接点があると考えられるからです。 この点において公的資金や補助金は主役になるべきでないとの考え方になります。 制度金融が利用できるとしても、民間金融機関との協融が望ましいと考えられます。

4)官と民の平等な関係
  次に第4点は、第3点とも関連していますが、民間金融機関や事業者の意見の反映が「官と民の平等な関係」の下で活発に行なわれていることです。
  とくに PFI のスキームについて民間側で取りにくいリスクが存在した場合に、民間側から注文を付けることが当然とされています。 いわば官と民はお互いに要求しあうことで、平等・公平な契約をつくり上げるというプロセスが保証されていると考えられます。 金融機関に外国銀行が参加していることが、官と民の平等な関係づくりに貢献しているとも考えられますが、 契約に対する感覚が鋭敏な国民性の現れともいえるでしょう。
  日本においても官と民とが対等な契約に基づき事業を進めるという点については、コンセンサスとなっていますが、 スキームづくりにおいて、民間側が活発に意見を言い、それが十分に反映されているかどうかという点になると、まだかなり問題があります。 実施方針や募集要項などについて質問・意見が多く寄せられ、その中には、客観的に見て民間側の主張がもっともだと思われる場合でも、 官側のスキーム、とくにリスク分担について変更したケースはあまり目にしません。 スケジュールなどに追われていてスキームの手直しが時間的に困難だという事情でしょうが、この点については、アドバイザーも含め、 官側のより弾力的な取り扱いを期待したいものです。

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2. PFI の二面性の克服
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 PFI は英国の国民性を反映してか、単純思考では処理できない二律背反の事柄をいくつか抱えています。 英国人はこの種の矛盾点の取り扱いに慣れているらしく、妥協点を見つけて折り合うことを楽しんでいるかのようですが、日本人は苦手のようです。
  前述の、妥協し工夫することを英国から学ぶべきという点と関連しますが、代表的な二律背反(二面性)的な事項とその克服について考えて見ましょう。

1)公共性と民間企業の採算性
  PFI は公共の側からは、あくまでも公共事業であり公共施設の整備です。 公共性を犠牲にすることは一切認められません。 PFI は公共性をむしろ質的に向上させるためにあるものだともいえます。 この公共性の一面だけを取り上げれば単純ですが、反対に民間側から見た PFI はどうでしょうか。 公共性のために民間が「協力」するのだと考える人が多いかもしれませんが、この場合の「協力」という言葉に、 民間の採算性が犠牲になるという意味が込められているとすれば、PFI を理解したとはいえません。
  公共性が犠牲にならないと同様に採算性も犠牲にはできないのです。 民間側が PFI に参加する動機は、あくまでも利潤の追求であって、そうでなくては株主に対しての説明責任が果たせません。
  つまり PFI は公共の側からは公共性の追求、民間の側からは採算の追求という二面性を持つということになります。 公共性の証明が Value for Money(VfM)とすれば、民間の採算性の証明はプロジェクトファイナンスとして民間の金融の審査をパスすることだといえます。 VfM と民間の採算はトレードオフの関係にあると考えられますが、単にキャッシュフローだけではなくリスク分担も関わりますのでこの検討は複雑なものとなります。
  また VfM は、シミュレーションの想定値としての数値と、民間の競争の結果としての数値の二つの側面がありますので混同を避けるべきです。 民間の採算性については、単に収益力やキャッシュフローだけでなく、抱えるリスク分担がより重要な判断基準であるため、 この点に関してはヒアリングなどの意見集約が重要になります。

2)性能発注と建物の質の確保
  設計・建設・運営の一体化により、コスト削減を指向するのが VfM の本筋とすると、設計の前段階としての性能設計(要求水準書)が重要となります。 PFI が競争原理や市場原理の導入によりコスト削減が可能となったとしても、その結果、 あまりにコスト意識が強すぎたために「安かろう、悪かろう」の建物になってしまう恐れがあります。 つまり、VfM の追求と建物の質の確保とは、もう一つの PFI の二面性といえます。 この克服のためには性能設計に十分な時間と体力をかけるべきです。
  従来の設計作業においては、選定された設計事務所が公共側の担当者との設計協議を通じて、 建物のコンセプトについてかなりの時間をかけて検討します。 しかし、PFI においては、事業者グループの提案がすべてで、選定された提案に対して変更を加えることには限界があります。 だからこの設計協議に替わる作業として、性能設計の役割は大きいということになります。
  また、政府のガイドラインにも記述されていますが、施設の意匠などについて重要性が高いと認識される場合には、 設計事務所だけ別途選定して、実施設計まで自力で済ませておく方法も可能です。 しかし、このことにより建物の質の確保は担保されますが、そのぶん設計と建設の一体化効果は薄れてしまうことも否定できません。

3)LCCの削減と大規模修繕
  PFI 事業において VfM を検討する際に、もっとも議論するべきコストは LCC(ライフサイクルコスト)です。 建物の建設といったイニシャルコストについては、VfM は比較的想定しやすいのですが、建物建設後の20〜30年の長期にわたる LCC については、 さまざまな不確定リスクを伴います。 とくに、かなり後になって顕在化してくる大規模修繕については、モラルハザードと社会の変化という問題の整理が難しくなります。
  まずモラルハザードですが、LCC を単純に事業者の提案に基づき審査した場合に、定量的(金額)審査において、LCC を安く見積もったグループが選定されやすくなります。もちろん LCC を節減しうるノウハウがあってのことでしょうが、問題となるのは選定時のそのグループのノウハウの優位性が20〜30年間保持しうる保証がないことと、 受注意欲にかられて無理なコストを提案することへのチェックが働きにくい点にあります。 大規模修繕が必要となるのは15〜20年以上の後のことですから、その時点では当初の基本協定締結時の担当者は公共・民間の双方とも、 とっくに代替わりしていて、当事者意識・能力ともに、薄れているかもしれません。 30年の事業期間の25年目に実行する大規模修繕について、民間事業者側が消極的になることは、いわば自然のことです。 いくら契約で縛っているといっても、25年前の契約で細部にわたって規定しつくせるものでもないとすると、この LCC 契約は遠い将来にトラブル要因を抱える懸念があります。
  次に社会の変化についてですが、実際の建物の大規模修繕は経年変化による劣化への対応としての修繕だけでなく、 社会のニーズの変化に対応しての「社会的修繕」もかなり多くあります。 むしろ民間施設、とくに集客施設では、こちらの方がより多いと考えられます。PFI で整備した施設でも、その種類によってはこの社会的修繕が必要となる可能性があります。もし LCC を契約によって固めてしまっていると、この社会的修繕をどう取り扱うかが、大変複雑な交渉となってしまうかもしれません。 したがって、その時点の担当者にとっては、公共・民間の双方とも、この社会的修繕について消極的な対応となりがちだと考えられます。とくに BOT の場合は、公共側でニーズを強く感じても、施設の所有権が民間事業者側にあることから、なおさら要求しづらいものとなるでしょう。 その結果、住民の満足度の水準が下がってしまう懸念があります。
  このように、LCC の節減という PFI の重要な要素は、大規模修繕の硬直化という側面を併せもってしまうという二面性があります。 この克服のためには、単純ですが事業期間を20年以内に短くすることが、まず考えつくことです。 大規模修繕は20年目以降に必要とされる場合が多いため、20年以内ではこれらの問題は起きにくいと考えられます。 しかし、20年では LCC の節減という本来の目的が薄れてしまうということも否定しがたいでしょう。
  次に大規模修繕を契約に含めない、つまり従来どおり公共側で主体的に取り組み、修繕コストと内容については、 そのつど民間事業者側と協議しながら実施していくという方式も考えられます。もちろん、これでは LCC 節減に対しての民間のノウハウの活用が十分発揮されないという批判が出されるでしょうが、 現実的には将来の柔軟を確保しうる点で一定の評価は得られると考えます。
  そもそも LCC は建物のライフ(生涯)期間のコスト(費用)のことですから、本来は50年超の期間を対象とすべきなのに、PFI としたために20〜30年で切られてしまう点が、問題の出発点ですから、この二面性の克服は完璧にはできないでしょう。 何らかの見直し条項を付した長期修繕契約のような、妥協的スキームをつくり上げるしかないと考えられます。

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3. 日本にとっての PFI
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 PFI は英国で育ってきた公共事業の進め方ですが、日本での展開はその PFI への期待や動機からしてかなりの違いがあります。したがって、わが国特有の事情について整理してみましょう。
  前述したように英国では国営事業の民営化の後の行程として PFI が現れてきたわけですが、日本では、まだそれほど民営化が進行したとはいえないでしょう。むしろ国営事業の民営化は、まだこれからの課題といっても過言ではないかもしれません。
  それではわが国で、この英国生まれの PFI はどうしてこのように展開するようになったのでしょうか。

1)深刻な財政問題
  まず第1に、国・地方を問わず「深刻な財政問題」があります。端的にいって予算がないために必要な公共施設の整備が進まない、何か代替の財源はないかというところから、資金調達(ファイナンス)の手段として PFI が脚光を浴びたと考えるのが自然です。3年前に当社が手がけた、神奈川県の県立保健医療福祉大学でスキームを BTO で構築した際に、一部から「BTO では、真の PFI とはいえない。割賦方式はヤミ起債のようなもので、今後 BOT でなければ PFI として認められないのでないか」との意見も出されました。大学の施設であるため BTO 以外の選択肢はなく、BTO であれば割賦契約しかなかったわけです。それはともかく、PFI の動機が資金調達である以上、その機能にあったスキームであって当然ではないかと、当時は反論したい思いでした。狙いが資金調達と建設コストの縮減であるのに、リスク移転が主題でなければならないと決めつける必要はないと、今でも考えています。
  現在日本で進行中の PFI 案件で、この資金調達と建設コストの縮減を真の狙いとしているものが、恐らく 80%以上を占めていると考えています。それほど国と自治体の財政は厳しい状態にあるということだと思います。PFI の資金調達機能は、端的に言えば財政支出の平準化ということになります。資金コストそのものは PSC(注1)に比較して高くなりますので、この部分だけでは VfM は出ません。いかに資金コストの官民格差を小さくするかを追求すると、 民間へのリスク移転を大きくしすぎるのは逆にマイナスだということにもなりかねず、このバランス感覚は微妙です。

2)第三セクターの行き詰まり
  日本における PFI 導入の第2の理由は、「第三セクターの行き詰まり」だと考えられます。第三セクターの行き詰まりについては多くが論ぜられているので詳しくは触れませんが、前述の「民営化が困難な公共事業」が PFI に向いた事業だという点と反対に、第三セクターでは多くの場合に民間だけで十分経営できる、つまり民営化が当然の事業に、自治体が出資を伴なう参加をしたことが行き詰まりの主因だと考えられます。つまり、公共性が十分に担保されていない事業に公共が参加することは、本来は 100% 民間がリスクを取るべきところを、実質的に公共にリスクを移転する結果となります。しかし公共側にその備えも自覚もないとすると、結果的に民間側に経営に対する甘えと収益マインドの弱体化を、公共側に無自覚のリスクをもたらしたと考えられます。
  第三セクターの失敗が社会問題化した結果、今やどの銀行も「三セク」への融資には極めて慎重になってしまいました。金融機関の支援なくして事業推進は困難です。「三セク」に代わる事業体として PFI が現れてきたのはこういった背景のもとに、前述の財政難が後押しをしたためと考えられます。
  「三セク」の反省から PFI を考察すると、PFI には「対等な契約に基づく厳正なリスク分担」という好ましい原理があるため、「三セク」よりも良いイメージとして受け入れられました。

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4. PFI 定着のための問題点
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 PFI がブレイク中の現在、今後の PFI の定着のための問題点を整理することは意義があると考えます。 ここでは一般に新聞などで論じられている税金や補助金のイコールフッティングのような制度的な問題とは別に、 あまり議論されていない点について触れてみたいと思います。

1)インフラの整備
  まず第1に「インフラの整備」です。とくに近い将来アドバイザーや弁護士が質量ともに不足してくるでしょう。 現状ではアドバイザーとしてはシンクタンクが、弁護士としては少数の渉外法律事務所が中心となっていますが、全国で 3,000 余りにも上る自治体を相手にするには、絶対的に不足しています。 アドバイザーとしては数多くある設計事務所が、また、弁護士については一般の法律事務所も担当できるようになる必要があると考えます。 私はニーズがある以上、わが国の PFI は多少の混乱があってもこの方向に展開していくと考えていますが、 もしこの広がりが果たされないとすると、PFI は東京を中心とした大規模案件のみを対象とすることに限られてしまうかもしれません。

2)証券化
  第2に PFI により設立された SPC の持つ債権や請求権を「証券化」する必要があると考えられます。 SPC 設立には出資金や劣後債が必要で、この負担は案件の数が少ない現在では何とか耐えていられますが、今後累積していくと、 その負担は企業内で問題視されるようになるでしょう。その意味で SPC の出資金や劣後債の部分を何とかオフバランス化できないかということに行きつきます。 そのためには、SPC の持つ割賦債権のような債権と維持管理費の請求権などをセットにして証券化することが考えられます。SPC への出資を一つの投資行為と考えると、投資に必要な流動性や出口戦略も備えるべきでしょう。 証券化のために克服すべき事項は数多くありますが、まずスキームづくりの際に、公共の担当者がその必要性を理解することから始めるべきでしょう。

3)プロジェクトファイナンス
  第3に「プロジェクトファイナンス」への理解が必要だという点です。金融機関側から見て現状の PFI は、主に公共の信用力に依拠しているローリスク・ローリターンの案件として認識されていると考えられます。とくに BTO の場合にこの傾向が顕著で、そのため一部の人々から「銀行がBTOを好むのは、プロジェクトファイナンスに対して消極的なためだ。もっとリスクを取る融資に挑戦しなければ、本来の役割を果たせない」との厳しい言葉も出されています。 しかしながら、もしハイリスクの PFI ファイナンスを指向しようとするのであれば、当然にハイリターンが是認されなければなりません。 プロジェクトファイナンスは、その本来の性格からしてハイリスク・ハイリターンであることが特色ですので、銀行がリスクを取る方向に進んでもらうには、もっと高いリターン、具体的にはより厚いスプレッドを許容する事が必要です。 とくに「集客リスク」を PFI 事業者に負担させるスキームにおいては、Availability Fee(注2)を大きめに設定しない限りかなりのハイリスクとなりますので、このハイリターンは必要条件となるでしょう。 そしてこのハイリターンが、その分VfMを小さくしてしまうわけですから、単純に判断はできません。
  日本でプロジェクトファイナンスが定着するためには、浮動担保の容認などの法律面の課題がありますが、 その前にこのハイリターンをどう理解し、どう認めていくかが最大の課題だと考えられます。

4)地元経済と PFI
  第4に、「地元経済と PFI」をどう関係づけるかという点です。PFI は競争原理の導入が基本ですが、その結果ほとんどの案件を中央の大企業が取ってしまい、地元の企業はいつも下請けの立場に甘んじなければならないとの指摘があります。この問題は、自治体にとっては PFI の検討に際して頭痛の種ですが、今までは案件の緊急性を理由に何とか議会などを説得してきたのだと考えられます。
  しかし今後の PFI の本格的な展開のためには、この問題の解決は大きな課題となります。 この解決の方向感として、まず地元の銀行の参加が必要です。地元の企業や経済をもっとも理解しているのは地元の銀行ですので、彼らがファイナンサーとしての指導力を発揮すれば、地元企業で事業グループを組成する事は十分可能です。 プロジェクトファイナンスの担当者がいないことと「三セク」の負の遺産などの理由で慎重になっているのだと考えられますが、とりあえず BTO のローリスクで小型の案件からでも挑戦してもらいたいと願っています。

 次にこれに関連して、「簡易型 PFI」という方向感も必要だと考えています。 大型案件ではむりでしょうが、比較的小型の事業であれば、PFI 事業者の役割を単純化したり事業期間を短くすることで、地元企業でも対応しやすくすることは可能だと考えています。よく英国の PFI 事業では、分厚い契約書を作成する、PFI とはそういうものだと説明されますが、これは国営事業で規模も大きいことが主因となっているのであって、必ずしも複雑な契約が絶対条件ではないはずです。 少しでも簡略化したスキームが、この地元との関係という PFI にとっての宿命的な課題解決の方向感となるでしょう。

企画開発担当役員 山本 郁夫

注1:Public Sector Comparator
公共が従来の技術、基準、運営手法などにより当該事業を直接行った場合の公共のコスト負担。
注2:Availability Fee
民間事業者が一定水準の主要な公共サービスを提供している限り公共から固定的に支払われる対価。

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