佐藤総合計画


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社長 細田雅春メッセージ

住宅の高層化と都市景観
高齢化社会の現実照らし都市の豊かさ再考

 新幹線を利用するたびに、車窓から見える地方都市の駅周辺に無秩序にまだらになって立ち並ぶ、中高層住宅(マンション)がつくる景観には失望させられる。しかもそれらの多くは5階建ての中層から14階建て程度で、片側が外部廊下になっている薄型の建築である。北側を向いた無表情な外部廊下の連なりが生み出す無機的な景観を見るにつけ、人間社会の裏側の憐れみすら感じてしまうほどだ。
 こうした現実は、言うまでもなく経済主導の利益誘導型社会がもたらした結果であろう。建築の貧しさはそのまま都市生活の貧しさを表す。最小の投資で最大の利益を生み出そうという願望が、住み手にも生産者にも広く行き渡り、その結果を当然のごとく受け止めている社会があるということである。最低の機能は充足させながらもできるだけ安くつくることで、取得への利便を図るというところがまさに経済取引の現実を表している。市場経済の仕組みが都市という公共空間にまで押し寄せているのである。

−貧しい景観もたらす利益誘導型の社会

 筆者は、都市景観の多くがこうした軽薄な中高層住宅によって占有されつつあることを危惧している。しかしながら、地方都市の経済的落ち込みも、そうした現象に拍車をかけている。雇用の場所が限定されていることと併せて、人口減少と高齢化社会の現実が、交通の利便性が低く、高齢者居住には相応しくない郊外から、利便性の高い都市の中心部へ移り住むという流れをつくりだしているのである。開発業者もそうした地域にはマンション以外に市場性はないと考えているのだろう、それでは企業誘致によって雇用の場が増えることはない。
 一方で地方都市の高齢化の現実は厳しい。移動手段がなく、本来は郊外に住み続けるわけにもいかない孤立した老人たちの問題である。都心部に住まいを移す高齢者もいる中で、大多数は、現在住んでいる古い住宅の建て替え時期を迎えても、資金不足と高齢化を理由に移動を拒否するなど一向に都心居住が進まない。開発業者も現状のままでの改築や建て替えには対処できない現実もあって、思うように問題解決の糸口にまで至っていないことが現状である。
 本稿は人口減少と高齢化などによって、都市部の空き家も増え、都市の空洞化が進む中で、果たして都市住居の高層化は必要なのかという疑問から出発している。そもそも、高層ビルがこれからの社会において居住空間にふさわしい場所なのか、現実に照らしても、その必然性は見えてきそうもない。

−必然性が見えない都市住居の高層化

   近年の都市政策は、都市の高密度化と高機能化に向け集約化を図ってきた。また都心で働き、郊外に暮らすという職住分離から、職住接近を志向する方向へ変わってきた。高層化も、こうした動きに同調して進められてきたが、それが本当に居住空間にふさわしいかどうかを考え直す必要があろう。高齢者が高層ビルの高みに生活の拠点を置くことがいかに理不尽で、不便なことなのかを考えるべきなのである。
 これからは、むしろ安全で大地の自然に近接し、水や緑をじかに感じ取れる暮らしをするためには低層の住居への居住を実現することが必然であり、多くの人々との交流を促進させることが可能な都市空間を目指すべきではないだろうか。居住者同士の交流も高齢故に不可欠なのであり、誰もが助け合い、互いに見守ることができる社会が求められている今日、それはまさに高齢化社会に不可欠な都市空間のあり方であると言えよう。
 筆者は常々、大都市を除いては高層マンションの建設は控えるべきであろうと考えているが、折しも一部の大都市圏では、老朽化した分譲マンションの建て替え促進のために容積率を緩和して土地の付加価値を高め、民間デベロッパーなどの開発業者の参画を促進し、さらなる高層化を目指す方針が示された。いわゆる「旧耐震基準」の建物が対象ということで、東日本大震災などのような大規模地震が起きた際の老朽化した建物の危険性に配慮した点では、一歩前進したということもできる。とりわけ、人口集中もいまだ続く大都市においては当然の措置との意見もある。

−人口減と高齢化が政策の大転換迫る

   しかしながら、将来的にみれば、日本全土で人口減少と高齢化は避けては通れない時代である。都心部でも、空き家問題が深刻な状況を呈し始めている。そうした都市の空洞化、空き家対策が未整備のまま、単に容積を上乗せする政策では、問題を先送りするだけではないのか。今以上に深刻な人口減少と高齢化、そして建物の老朽化はほぼ同時期、およそ35−40年先に起こることになる。結局のところ、これからの社会の動向に対する解決策にはならない。開発業者や既存居住者の金銭的負担を解決しようとする政策は、あまりにも安易すぎる方法ではないだろうか。
 都市政策は大きな転換点を迎えたのだとする考えこそが、いま必要なのだ。工業社会がもたらした近代的産業構造の大変革が起こり始めているいま、都市空間の住み方を変えていくことは必然ではないのか。

−都市に問われる社会変質への対応

   例えば、都の政策とは反対に、既存の旧耐震の高層マンションは、減少する人口に見合った低層型居住を可能とした建築に切り替える。そこで新しい付加価値の高い環境を整備するためのアイデアが必要になろう。もちろん、高層マンションのすべてを否定しているのではない。若者と高齢者が交流できるための「環境整備」は必要である。その上で、これからの社会の変質に対応できる都市のあり方が問われているのである。高齢化社会という人類が未だ経験したことのない社会の到来に向け、いまその用意をすべきときであることを忘れるわけにはいかない。都市景観が経済至上主義の餌食になって、軽薄で画一的な高層住宅が林立する見苦しい状態にさらされている現実を、今こそ見直すチャンスなのである。
 高齢化社会の現実とは何だろうか。その現実に照らせば、経済的合理性と市場経済に媚びた容積緩和という手法がこれからの社会に相応しい都市空間の形成に寄与することになるのだろうか。都市社会の豊かさとは何かを、強く再考しなければならない時期なのである。

日刊建設通信新聞 2017年6月13日掲載



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