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社長 細田雅春メッセージ

シリーズ 国のかたちを考える グローバルと個の新たな一体感で成長を

  国が東北再生のエンジンになっていないのが残念だ。国民があって国家があるということを認識していない。国のシステムが地域や個別の声を即座に聞くことができていないということは、国家というものが機能しなくなってきているということだろう。しかし、われわれ個人も、国にすべてを任せるのではなく、それぞれの市町村とも連携しながら、個々人やコミュニティーが日常的に安心・安全を自覚し考え行動しなければいけない。最終的には個人個人がどうするかであり、国はそれをどう支援するかになる。国に頼る姿勢ではなく、自分たちで新しい時代をつくるという主体的な行動・意識への改革が今こそ求められている。

東日本大震災では自然の意味、認識が大きく変わった。巨大な防潮堤を造っても限界があり自然の脅威を前にすると、壊れるものは壊れてしまう。自然には人間の想像力をはるかに超えた力が存在する。最も大事なのは人命を守ること。命を守るために何をするかだ。

−足元見つめ身の回りの問題考える

  新しい時代に向けた課題はたくさんある。経済や社会の変曲点を迎えている大事な時期にあるからこそ、足元を見つめ直し、身の回りの身近な問題をしっかり考えていきたい。グローバル社会の中で個別の豊かさを認識するには、日常の中に温かみのある場所や空間を用意する必要がある。「小回りのきく場所や地域に根差した世界の創出」「環境や省エネを積極的に取り入れた世界の創出」「自然との日常的親和感が認識できる世界の創出」「ITとヒトの新しいコラボレーションによって生み出される世界の創出」などに力を注ぎ、人間的で日常的な身の丈に合ったものにダウン・サイジングしていくことが大切だ。

アベノミクスで打ち出された成長戦略は、われわれ民間が主体となり現場に則して考えるべき問題であると思う。PPPやPFIを取り上げても新鮮味はなく、政治家や官僚は現場の問題を本当にリアルに捉えているのだろうかと疑問にすら思う。国の金融政策もグローバルなシステムの中に深く組み込まれ、日本独自の政策だけでは成り立たなくなってきている。私は経済の専門家ではないが、アベノミクスもたちまち世界の動きにのみ込まれて、具体的な経済成長に結び付かなくなるのではないかと懸念している。

−変わり始めた建築と都市の定義

  グローバル・ネット社会の進展によって「情報」「カネ」「ヒト」「モノ」が世界中を自由に行き来できることを認めつつ、地域や地方、個人や企業などのローカル・個の意識を持たなければいけない。グローバル社会と個の社会とではそれぞれに課題が異なる。まずはそれを認識した上で、どのように考えていくかが重要だ。こうした考え方は、国や地域、都市や建築などすべてに共通する。

グローバルとローカルは、決して対立関係にはない。むしろ両者の新しい一体感に基づく成長戦略がある。グローバルを忘れて個を考えたり、個だけを出し過ぎたりしてもいけない。グローバルなネット社会の力は、個別の潜在力を引き出し、さまざまな個を結び付ける。

建築または都市の定義が変わり始めてきたと感じている。近代以前の建築は、時代の総和として文明の頂点に位置していた。しかし近代以降、頂点の役割を失い、現代では都市活動の中に生起するさまざまな要素の一つとされ、部分の役割を担っていると考えざるを得ない。

極端な事例だが、若手の企業家などの生活は、家という存在を極めて軽視している。冷蔵庫も無ければ、車も無い、ワンルームのような簡素な部屋で寝るだけの生活をしているケースもある。つまり自宅は生活を楽しむという空間ではなく、都市活動の一部と位置付けられている。その一方で、古典的なマイホーム型の生活をつくる定住型の家のイメージを持ち続けている人たちも少なくない。

つまり、建築がこれまでの定義の中に納まらない多様なスタイル、状況の中に存在し始めているということだ。それはまさに、従来の定義を超え、人々の活動、生活の多様さを包含している現代の都市空間全体の中で建築を捉えるべきだということだろう。

−日本発のデザインの力を発揮

  個人のライフスタイルが変わり、産業構造も大きく変化し、都市活動のあり方も変貌している中で、設計事務所の形も変わらなければ駄目だ。今までの大手総合事務所は、意匠や構造、設備、積算、ランドスケープなどをトータルで総合的に取りまとめる役割、機能を果たしてきた。しかし今は各分野の機能や能力が極端に専門化、高度化しており、1カ所に集約して一企業が抱え込む必要もなくなり始めている。

総合事務所は違った形で役割を果たしていかなければいけない。より複雑になっている都市や建築の問題を解決していくには、外部の高度化した自立性の高い専門能力を必要に応じてアセンブルする能力をいかに持てるかが重要になる。しなやかで時代の要請に応えられるセンスも持ち合わせ、総合的にマネジメントしたり、プロデュースしたりできる総合事務所の新しいあり方や形を模索している。

もちろん、その根幹にあるもの、つまりコアコンピタンス(核となる能力・得意分野)はデザインの力だ。最終的にはデザインを中心軸に据え、日本発のデザインの力を発揮できる事務所にしていきたいと考えている。

日本再生のポイント

日刊建設工業新聞 2013年6月24日掲載



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