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社長 細田雅春メッセージ

女性の就業環境創出は都市環境を変える

 都市の発展や社会の進歩は、基本的には人口増という物理的な絶対値が果たしてきた。さまざまな都市の仕組みや社会的制度は都市人口の増加に伴って、またより複雑な仕組みを備えることによって、成り立ってきたことは歴史を振り返るまでもない。
 過去の都市の歴史は、マルサス的人口制約説ではなく、人口の推移がその発展の成否を司ってきたと言えるのである。地球全体で見た場合の人口増加現象のピークは2050年だと言われているが、日本はすでにそのピークを過ぎて、高齢化による減少と少子化による減少が重なって、急速に人口減少が始まり、都市の縮小化が懸念され始めている。とりわけ、大都市では高齢化問題、地方都市では人口減少が顕著になり、都市の活力が失われつつあることによって、さまざまな弊害が出始めている。その最大の弊害は、明らかである。今までの成長を前提に機能するよう作られてきた都市の規模や制度が身の丈にそぐわなくなり始めたということである。その最大の原因は、都市の形や制度、そして社会システムを放置したまま、すなわち、経済的成長のイメージのまま、人口減少と税収の縮小を経験したことにある。無論成熟社会による、ライフスタイルや産業構造の変化などの諸要素もあるが、高齢化と少子化は、決定的に未来の構図を書き換え始めたということなのである。
 もはや、現在の都市の構造やそのシステムは、日本の人口減少や高齢化、そして財政規模の縮小には見合わないものになっているのである。しかも、人口減少は、一時の減少ではなく、22世紀までにもわたる深刻なものだからである。インフラの補修費だけでも、現状維持はほとんど不可能な状況にある。

 ではどうすればよいのか。日本の場合、人口減少化でもGDP成長率2%は可能だという説を前提として考えたい。その場合、それを達成するためにも日本の国民への税負担は小さくし、規制緩和を図り、民間が自由に振舞える枠組みを整備することが必要である。その一つが言うまでもなく、社会保障と税制の一体的改革である。しかしながら、野田政権の「社会保障と税との一体的改革」は社会保障の部分が一向に見えてこないところに問題がある。社会保障の中には、増え続ける高齢者の医療費や介護費用、年金など含まれているが、何よりも問題とすべきは、現状の都市や社会の枠組みを、少しずつ変更し、新たな規模に見合った社会システムに移行することである。
その最大の効用は、新たな成長産業を見出すことも不可避であるが、先ず何よりも日本の生産労働人口(15歳〜64歳)における労働率を増やすことである。とりわけ若年層の労働力は不可欠である。現在、女性の労働力は男性に比べると半分にも満たない。その内訳も、非正規雇用者やパートといった雇用者がその多くを占めて、本格的な女性の労働環境が整備されている状況には程遠い状況である。先進国の中でも、大きく出遅れている。

 こうした労働力問題を解決するために、短絡的に移民による労働力確保や生産拠点の海外移転、あるいは極端なロボット化などがあるが、それぞれの可能性は当然検討しなくてはならないとしても、日本の潜在的能力の掘り起こしなくして、事態の前進を図ることにはならないことを考えなくてはならない。
同時に、これからの成熟社会に向かって、社会の仕組みとあり方を自らの意識改革と合わせてライフスタイルを変えていかねば、問題は解決されない。そのライフスタイルの変更の原点は、成人の男女は、平等に働き(男女の肉体的差別は必要)、共に家庭を築き、子供は社会や地域と共に育てる環境を作っていく社会システムの新たなる構築である。成熟社会と高齢化、少子化など大きな社会的環境の変化した時代にあっては、男が外に出て働き、女が家庭を守るという構図は変わるべくして変わり始めることが必然である。

 その必然を成り立たせるためには、何よりも、若い世代の社会保障の充実である。産休の保障、職場復帰訓練や雇用者側の継続的就労プログラムの開発などがあるが、とりわけ社会保障の主題は、緊急課題でもある「子育て環境の整備」である。この子育て環境の整備が整わなければ、女性の労働力の創出はできないことは明白である。
子供の成育環境は、0〜2歳児、3〜5歳児(幼児)、6〜8歳児(小学生)は少なくとも、親の就労に負担のかからない子供の成育環境を可能にするシステムが不可欠である。無論9歳以上の子供たちも同じように考える必要があるが、その使命と枠組みは次第に緩やかになるべきであろう。ここになぜ、6〜8歳児の小学生を入れたかであるが、言うまでもなく学校には保育的性格は基本的には備わっていないからである。だからといってこの場には教育的役割が皆無ではない。当然子供の成育環境には教育的役割が不可欠であることは言うまでもないからである。そうした環境の整備のためには公共、民間を含めた教育と託児を合体させた新たなシステムの構築がなければならないと考える。現行の制度的縦割りの幼稚園と保育園の問題ではなく、より包括的な子供の成育環境整備である。これは単に資金や所管の問題ではなく、子供の成育には、地域の力や社会の関心がなければ、本来の子育てではないという視点から生まれたものである。親と地域社会が一体となって、子供の成育環境を作り、見守っていくという姿勢こそがいま問われている最大の問題なのである。
社会学的には、小学校を一つの単位とした社会単位を近隣住区というが、筆者はさらに0歳児から8歳児までの保育的環境整備のために、親の通勤ルートに近い交通立地と利便性を考慮して、「近隣単位」という制度を創設して、3つのグループに仕分けし、保育を中心にした施設を作ることを提案したい。近隣住区の小学校の規模にもよるが、単位あたり2〜3の施設を用意する。できれば、駅ビルに内包するのがベストだが、駅に近いということは一つの必要条件である。そして何よりも重要なことは、経験豊かな高齢者のボランティア制度を積極的に活用し、地域社会で支えるという意識の醸成である。

 先にも述べたように、大都市では何よりも高齢者の拡大がさまざまな問題を生み出しつつある。それだけに、元気な高齢者の活動の場の創出はきわめて有効であると考える。こうして、地域に密着した人間関係が醸成されることになれば、失われつつあるコミュニティーの再生にも寄与するからである。現代社会の核家族化の弊害も解消され、学校教育ではできない、しつけや社会的ルールを継続的に伝達でき、高齢者も大きな生きがいを持つことになるからである。
さらに筆者が注目しているのは「子供の城」のような場所ができ、「近隣単位」を構成する地域社会のコアとなることによって、地域の多くの関心が集まり、コミュニティーの活力源になる可能性が期待できるからである。さらに、人口減少の方向を見れば、コミュニティーを元気にさせる意味においても、都市がコンパクトで効率の良い方向を向いていかねばならないことは言うまでもないことだからである。
このようにして、大都市での元気な高齢者の就労を促し、女性の就労環境を整備してゆくことは、将来的に、税収、とりわけ日本の労働力の中心を支えている労働中間層の所得税の拡大化に繋がる。この部分の整備こそ日本の税収の最大の問題点であるからである。
このように女性の就労の拡大化は、都市問題にも新たな光を与え、これからの日本を変え、新たな成長産業をも掘り起こし、新たにする社会システムの大きな転換点を生み出す原動力になるものだと筆者は考えているが、いかがなものだろうか。

日刊建設工業新聞 2012年6月29日掲載



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