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社長 細田雅春メッセージ

「二住宅所有論」を提起する 別荘超え新生活様式を創る 内需拡大、地域振興、復興へ

  明治以降、西洋的価値観の下、日本の近代化が進み、都市生活者のライフスタイルも変わり始めたとき、富裕層にとって、都市に居住しながら郊外に別荘を持つということが、避暑や避寒という名目以上に自らのステイタスの表現として一つの流行にもなった歴史がある。とりわけ鉄道網が整備されてきた大正時代には、軽井沢などが避暑地として整備され始めたこともあって、一気に別荘という概念が定着してきた。そして現在では、それほどの富裕層でなくとも、別荘と名の付く第二の住宅を持つことは比較的一般化し、リゾートマンションなどもそうした傾向を押し上げている。

  さて、日本の社会はいわゆる成熟社会となってきた。過去幾度となく高度成長期を経験して、世界の中で先進国としての威信を確立してきた日本だが、後進国といわれていた国々の成長もあって、日本を含めてすべての先進国はその成長にかげりが見え始め、国家的成長の指標であるGDPも次第にその意味するところを失い始めてきた。そして、貿易黒字という指標もその役割を失いつつあるのか、単に経済的指標が海外との比較における優劣といったものではなく、自らの豊かさとは何かを自らの尺度に合わせて考えることの意義を評価する時代を迎えたとすべきなのではないのか。

−住み方変え社会活力を

  むろん、このような意見に対しては異論があろうが、筆者は外需の売り上げよりも、むしろ内需の拡大に眼を向けるべきではないかと考えている。内需拡大にはそれこそさまざまな手立てが考えられるが、ただ単にモノの需要を喚起するだけでは、本質的な生活の豊かさには届かないし、ライフスタイルや価値観の変容にまで迫ることは困難だからである。すなわち、成熟社会に相応しい新たなライフスタイルを生み出す場面にまで迫る必要がある。これからの少子高齢化社会では、放っておけば、明らかに人の動きが停滞化する。それでは社会の活力は生まれない。積極的に動き回る社会の構造があって、はじめてさまざまな出会いや可能性が生まれ、社会の活力が生まれるのである。そのためには、私たちを取り巻く社会的システムや生活の基本である住み方を変えることが不可欠である。その一つが、新しい居住形式に迫ることではないかと考える。

  それが、住宅の二重化政策の勧めである。既存のいままで住んでいる住宅を基本として、地勢的にも安全な場所に、別荘的感覚で第二の住宅を持とうという発想である。この発想は、経済的富裕層が、単にリゾート地に別荘を持つというものではない。地方の、経済的にも疲弊した都市型限界集落のような地域に、若い人たちが第二の住宅を持つことによって、週末を静かな環境の良いところで過ごし、ウィークデイには都市で精力的に働くのも良いだろう。また裕福なリタイヤ組は、逆に週末に都心に出て、音楽や絵画や大都会ならではの買い物を楽しめば良い。新幹線や自動車で2〜3時間かければかなり距離のある場所でもそれほど移動には困難は伴うまい。その結果何が起こるかといえば、当事者はかなり安価に、緑豊かで、静かな場所に広大な土地や家を保有でき、老後の豊かな生活を送ることが可能になる。また地元にとっては、遊休地が有効に活用でき、なおかつ税金が落ちるのだから、地方経済にも寄与するというものである。しかも人が住み始めて、活力が生まれれば、適度なにぎわいも生まれてくるはずだ。

−震災仮設に違和感

  筆者の二重住宅所有論はこうした考えをベースにしてきたのであるが、とりわけ、東日本大震災の状況を見るにつけ感じてきた違和感がこの思いをさらに強めている。それは、地震や津波の災害に際して、安全性を確保するという名目で、強制的な街ぐるみの高台移転や、仮設住宅への移転など、居住環境の継続性やコミュニティの存続性などを極端に等閑視した問題への疑義に始まっている。何よりも大切な生活の継続性を担保しつつ、安全な生活環境の確保や日本のこれからの社会的変化を考えていたときに、この二重住宅所有論はきわめて有効であると思われる。
  もちろん、問題もあるだろう。リタイヤ組は、新たに地勢的にも安全で、交通立地性もあって、なお安価で環境の良い場所を見つける必要がある。また、現役組は、職場などの生活基盤によっては選択の幅が左右されることになる。しかし、少なくともそれなりの距離を保って地勢的にも異なる、例えば、安全と思われる高台に第二の住宅を建設することもできるし、こどもの教育環境やそれなりの生活の利便性が確保され、しかも地勢的にも異なる土地に住宅を所有することも良い。いずれにしても重要なのは、その第二の住宅には、さまざまなライフスタイルの幅を含ませる必要があるということだ。富裕層であれば、広大な場所と環境を確保し、都会にはない魅力的な住み方も可能だろうが、第二の住宅論の基本的主旨・対象は、むしろ平凡な一般的生活水準の人である。例えば、全国的に増加している住宅ストックの空き家を活用することもできよう。実際、住宅の空き家率は、2008年の調査で13%強であり、将来的には20%を超えるという予測もある。地方ではもっと高い数値である。それならば、こうした空き家を官民共同で整備活用すれば、地域経済の再生や時代に相応しいコミュニティ形成への起爆剤にもなるだろう。
  そして、何よりも重要なのは、こうした二重住宅での生活によって、さまざまな個別のライフスタイルを実現できるという可能性を示すことだ。夫婦二人でそれぞれの趣味を大事にした空間づくりもいいだろう。あるいは、シェアハウスのような形もありだろう。また時には、より大きな新しい形式の共同住宅のあり方を模索する必要もあろう。

−大きな需要揺さぶる

  このように、第二の住宅は単に別荘という概念を超え、異なった場所に二つの住居を所有し、これからの生活の変化に合わせて、日常的に二つの住宅を行き来しながら住み続けるということで、新しい時代に相応しい多様なライフスタイルを生み出すことを期待するものである。そこに今まで経験されたことのないコミュニケーションの形が生まれれば、新しい形のコミュニティの可能性が見えてくるということだ。さらに、一つの住宅ではなく二つ以上の住宅を持つことによって、小さなモノの消費のレベルではない、大きな消費経済に揺さぶりをかけ、それこそ内需拡大に大きく寄与するというものである。さらに筆者が期待していることは現在の都道府県制度から広域的な道州制に切り替えることで、二拠点居住の可能性の幅を拡大し、それぞれの州内の移動を促し、さまざまな社会経済活動を高めることである。

  言うまでもなく、この「二重住宅所有論」の実現には多くの問題があり、未だ理念的域を出るものではない。しかし、日本が未曾有の大災害を経験したいま、高齢化社会の現実と、豊かな日本の再構築へ向けた将来像を手元に引き寄せるためには、この拙論も有効なのではないかと考えている。これを一つのたたき台として、さらなる現実的課題をクリアして、新しい社会システムへの転換に向けて、より進化できればと、願っている。

提言の要約

日刊建設通信新聞 2012年5月17日掲載



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