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社長 細田雅春メッセージ

現代社会が要請する復興の姿 できることを先行させ、次段階では脱画一のプログラム

 東日本大震災の復興に向けた動きについて、国の縦割り行政の弊害なのか、現場での行動方針が一向に見えてこない。すでに震災発生から3ヶ月が過ぎているにも関わらず、仮設住宅への入居さえ思うように捗っておらず、空室さえ目立つ状態だという。民間が集めた義援金も、その大半は被災者の手に渡っていない。さまざまな法規制の中で身動きが取れない状況にあることがその原因の一つであろう。そのために行政の枠や規制を超えて、事態の打開を図ろうとする動きもあるようだが、意見のすり合わせすら進んでいない状態である。

まったく異なるシステム前提の議論がない

 さらに、こうした状況の中、問題の本質を見据えた議論がなかなかできないことに驚きを禁じえない。現代社会の価値観の多様化、環境問題やエネルギー問題、少子高齢化社会など、東北地方に限らず、日本全体として、これまでの社会システムとはまったく異なる新しいシステムを前提にした議論が見当たらないのだ。なぜならば、そうした社会の変革に、今回のような未曾有の災害という事態を重ね合わせた上で復興のあり方を考える必要があるからである。
 それは、これまで目標が明確に見えていた、あるいは単純に特定の目標を設定することが可能であった社会とはまったく異なる社会の構造を前提としなければ、今回のような複合的な巨大災害(地震、津波、原発事故)に対して、有効な回答を引き出すことは不可能なのだ。その認識が何よりも重要なことではないか。
 実際に、完結した単純な理想像として復興ビジョンを描くことはもはやできないし、それ以前に、そのようなビジョンは描くべきではないのである。むしろ、必要なのは、今何をすべきかを議論し、当面必要不可欠な課題にプライオリティをつけ、着実に見えるようなかたちで実行させることである。 例えば、東日本全体にまたがる特区構想を前提に、権限の一元化を図り、その枠組みの中で、何を実行するか、そしてその次に何を具体化するかを明確にすることだ。さらには将来の展望や期待がそれぞれのレベルで見えてくるようになることが大切なことになる。しかしながら、その一元化も危ぶまれる状況になれば、現在の枠組みの中で、できることから先行させるプログラムが不可欠になる。
 そのとき、どの選択が現実的かという判断は、時間的猶予があるか、ないかで決まることになる。その判断こそ優先されなければならない。そして、そのプログラムの前提は言うまでもなく、水を含めた食料の供給、最小限のエネルギーの供給、安全な避難場所の確保である。その後に、瓦礫の撤去や処分、雇用の創出と確保、そして住環境の整備が必要になる。
まずこの2つを速やかに実行し、次なる展望、すなわち「段階的発展」の姿を示さねばならない。これらは、都市インフラの基本であり、生活の第一歩を踏み出すための最低の条件である。その意味するところは、食料とエネルギー、交通と交流、そして安全の構築なのである。  次に、この枠組みに沿った「段階的発展の多様なプログラム」の考察である。とりわけ、居住環境の確保は重大である。現在問題なのは、この議論が極めて不十分であることなのである。避難場所の確保から始まって、仮設住宅の建設という過程はだれもが考える重要なことであるが、それならば、仮設住宅「後」を見据えた連続した展望を早急に示さなくてはならない。その見通しこそが、人々の安心と、今後の生へ期待を醸成するからなのである。それは雇用の展望とワンパッケージである必要がある。そのとき画一的な考えではなく、多様な要請や制約、さまざまな個別の期待や願望を受け入れるだけの余地が常に残されていることが必要だと思われる。つまり、もはや戦後復興と同じような画一的なプログラムが通用する時代ではないということなのだ。ライフスタイルや価値観の多様化や変化の速度を視野に入れたプログラムが用意されなければ、今、理想的と思われるようなビジョンが描けても、たちまちにして陳腐化し、多くの人がそのビジョンを受け入れることはないのではないか。そして、その結果は多くの人々の地域からの離脱を生み出すことになる。

「今」に応えなければ復興の姿は描けない

 そこで、避難場所の充実と仮設住宅のプロセスをスキップして、ユニット(単位)を区切り本設への移行を速やかに行うというプログラムを提案したい。画一的なゾーニングによって住居ゾーンを造るのではなく、より小さなコミュニティを形成できるユニット、例えば、霜降り肉にサシが入っているような図柄を思い描いてもらえば良い。そして、さまざまな条件や要請に基づいて現実的なユニットを決め、多様な要請に応えることができる場所性とスケールを生み出せばよいのではないか。もちろん、その成立には各インフラの強化や公共施設の整備が前提になるが、それらも段階的にプライオリティの中で進める必要がある。
 この考えを実行するには、さまざまなシミュレーションの上で行わなくてはならないのは言うまでもない。この主張は、現代社会が要請する復興の姿とはどのようなイメージを持つべきなのかを示したに過ぎないが、こうしたイメージの共有化の最大の意義は、時間的緊急性を計りながら、「今」を解決しなければ、事態の悪化を拡大するという警告にある。復興のあるべき仮説と、できることから個別に実行していくという、ある意味ではアドホックなプログラムが「今」という現実と未来を救済するのである。

日刊建設通信新聞 2011年6月27日掲載



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