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社長 細田雅春メッセージ

国土計画と地域計画への提言 復興ビジョンを俯瞰し自然の文脈を読み解く

 3月11日の震災の後、東北沿岸部の各都市の支援と激励を兼ねて訪ねてきた。まさに、一網打尽に都市が消滅してしまっている様子には言葉もなかったが、何よりも自衛隊の機動力によって基幹道路がいち早く復旧したことは見過ごせない事実であろう。これだけの大きな災害に対して、被災地への支援物資の供給がいち早く可能になり、インフラ、とりわけ道路の復旧がいかに大切かということがあらためて認識された。また、仮設住宅は多少用意されてはいたが、しかしながらいまだ、生活の拠点となるような住居に向けた展望は、まったくないというのが現実であった。
 それゆえ、まずは基本的生活が維持できる復旧基盤の整備に全力を挙げねばならないだろうが、同時に必要なのは、東北地方の臨海都市における復興計画のビジョンではなかったか。
 当然それは、早期の復旧を図りながら、そこにオーバーラップさせる形で、復興計画の輪郭のイメージを共有することになろう。
 今回の現地調査とさまざまな報告を合わせて、以下に復興の方向を示してみたいと思う。

復旧自体に復興計画のエッセンスを

 復旧の第一義は、インフラの回復と整備である。そのインフラの復旧が大前提になって、復興計画が立ち上がるのであるが、そのインフラの復旧自体にも復興計画を大きくリードする計画のエッセンスが投入されるべきであろう。今回の災害の最大のダメージは平地の臨海部に形成された都市に押し寄せた津波の被害である。
 それだけに、その復興の姿は、津波を想定した都市の姿を前提とした計画であるべきなのは言うまでもない。問題なのは、過去の多くの津波災害の経験が伝承されないほどに「新たなる発展と膨張」を繰り返してきた現代の都市のあり方に歪みがあることだといえよう。
 自然災害の頻度こそ少なくとも、自然環境とともに調和して生きる英知の結晶が都市基盤の最低の基本であるべきだからである。風土や地勢の理解、過去の経験に基づいた教訓の中にこそ、地域に根ざした生活の基盤と都市の基本があるのではないのか。

都市の枠組みに基幹道路を位置付けよう

 次に、インフラの大動脈たる基幹道路をどのように位置づけて都市の枠組みを作るのかについて議論が必要になると思われる。
 都市を貫く南北を縦貫する、いわば、国土を成立させるための基幹道路を海岸線から500メートルないし1キロほど内陸に、例えば土盛りで形成したアース式ダムのように堤防状に設定して、それを挟んだ臨海部と内陸部を有機的につないだ都市開発を行うなどの方策はどうか。
 津波の大半をこの基幹道路によって遮ることを前提に、内陸部には居住地域とさまざまな生産拠点を造り、津波から守られる構造をとる。
 一方、臨海部は漁港やそれに伴う生産活動施設や海と連動した観光の場とする。そのためには、現代社会の大動脈を構成する基幹道路は国家的政策の中で、現代の科学技術を動員して、早急に造るべきである。むろん、地方の街づくりや産業の基盤整備は、地方の自治体や民間と協力して積極的に議論を深める必要がある。生活の基盤づくりは、もはや「お上」だけの仕事ではなく、地域の個性や災害の苦悩といった、自らの経験の上に立つことが何よりも大切だと思うからである。

建築の新しい見地、風土と地域コミュニティー

 そして、当然、津波の教訓を活かした都市構成に加え、建築には新しい見地を盛り込まなくてはなるまいが、美しいリアス式海岸を活かした日本の海洋都市の風景を構築する意気込みは不可欠である。何よりも大切なことは、風土に根ざした建築と地域コミュニティーを再構築することについて議論を深めることである。同時に単に快適性や安全・安心をわきまえた現代という科学と技術だけに依存した都市や建築がすべてではないことを考えなくてはならない。長い歴史や伝統、そしてさまざまな災害の痕跡を投影し、それを乗り越えてきた都市や建築そして地域コミュニティーのあり方を尊重した上で新しく構築することこそが必要だ。そうした観点から安全や安心を構築することが、地域の個性、さらには新しい都市像や建築を生むのである。
 例えば、リアス式海岸のそれぞれの場所や地域の個性と変化が被害に大きく差異があったことを見れば明らかといえる。松島などは多数の小島が津波の勢いを緩衝したことで、大きな災害は免れたという事実もある。入り江の大小など地形によっては津波の大きさもさまざまである。そうした経験こそが大切なのであって、一概に津波の被害で考えることはできない。地形や地域の個性や過去の歴史は、すべての原点となるのである。
 今回の災害で、現代都市や建築に最も問われたことは、自然災害は自然の文脈を忘れてはならないということではないだろうか。地形や地勢を考え、自然と付き合う方法を忘れないでいてこそ、都市や建築が存在するということである。
 その前提をもって現代科学技術の英知を重ねることが切に求められているのではないのか。

日刊建設通信新聞 2011年5月16日掲載



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